CAMP HANSEN -- 寒さが一段と深まった旧暦の元旦にあたる1月29日、名城大学(愛知県名古屋市)の12名の学生たちが海兵隊キャンプ・ハンセンを訪れ、基地渉外官の嘉陽貴幸氏と海兵隊太平洋基地政務外交部の伊敷正明氏がにこやかに学生たちを迎えました。
学生たちは荻藤大明(ともあき)博士のゼミ生で自分たちの目で実際の米軍基地の中を見学し、肌で感じ、そこからいろんな視点で学ぶために来訪しました。
学生たちがまず訪れたのはメディカル・シミュレーション施設で、施設長のジョナサン・エーカー氏が学生たちに挨拶し、簡単に施設の役割を説明してくれました。ここでは戦術的戦闘外傷救護(TCCC)訓練を主に行っており、スモークを充満させ、部屋を暗くし、銃声や閃光等のエフェクトを使用して実際の戦場での雰囲気を作り出しています。本物さながらに叫びながら出血をする人形もあり、救護を行う時に受講者たちが噴出した血糊で真っ赤に染まる事もあるそうです。
「敵から自衛ができないと味方の命も救えません。戦場での救護で1番大事なのは自分の命を守ることです。」とエーカー氏が野戦病院のテント内を見立てた部屋で学生に語り掛け、学生たちの顔が少し引き締まりました。
第3遠征運営訓練群総指揮官ダグラス・ヴァブラウ中佐が「ここでの訓練は戦闘外傷救護ですが、ここで培った経験は救命士、消防士、ひいては警察官としても事故・災害時に救命・救護の際に役に立つスキルです。訓練を通し、いつ何が起こっても大丈夫なように準備しておくことができます。」と語りました。この日は防衛大学の学生たちが講習に参加し、衛生兵の指導を受けていました。
レストラン・パームズ内の士官クラブに移動し、ハンセン業務部長トーン・ノー大尉がキャンプ・ハンセンの施設や基地の役割を学生たちに説明してくれました。
学生たちは真剣な表情でノー大尉の説明に聞き入ってて、質疑応答ではたくさんの質問が寄せられました。さすがは英語学科の学生たち。嘉陽氏の通訳を介さずに自分たちで質問を英語で行うことを難なくこなしました。質問の中には米軍再編、DPRI(防衛政策見直し協議)に関するものもあり、ノー大尉も真剣に回答していました。
嘉陽氏は海兵隊員たちがボランティア清掃活動や金武町の園児たちとの英語交流会を通じ地域コミュニティに常日頃から心を配っていることを学生たちに優しく語り掛けました。ノー大尉も災害非常時に住民たちを基地の高台へセキュリティー対策をしつつ、いかに速やかに受け入れるかという改善点を基地として常に考えていることを述べました。
ビジットの最後は基地従業員でも年に1度しか行くことができない兵士専用食堂(メスホール)で昼食となりました。
食堂の広さや、食事の量や種類の多さに一同驚きながら自分が食べたいものをトレーに載せていく学生たち。リンゴやバナナ、オレンジも丸ごと1個なところがアメリカスタイルです。学生たちは先ほどハンセン基地のブリーフィングをしてくれたノー大尉や他の海兵隊員たちと昼食を共にしながら交流を図りました。交流会にはボランティア活動を常に頑張っているロン・グエン伍長の姿も。
国際英語学科3年の一ノ瀬七海さんは今回のビジットを通し、色々な体験ができたと語ってくれました。特にTCCCのコースでスモークが充満した暗闇で閃光が炸裂し、銃撃音の中、自身を守り負傷者を手当てしなければならない疑似体験に今まで感じたことのない色々な感情が交差したとの事。また、基地は国防を担う重責のため、海兵隊員たちは近寄りがたい想像をしていたそうだが、いい意味で予想が裏切られ隊員たちがフレンドリーで話しやすくて嬉しかったそう。
海兵隊員たちの有事の際に直ちに多方面にわたる作戦展開が出来るように日夜訓練に励む姿も、学生たちと和やかに談笑しながら趣味や好きなスポーツを語る姿も彼らと同じ若者である事に気づき、そして海兵隊のインド太平洋エリアにおいての防衛やその役割を知って貰うことで相互理解を深めることができました。