CAMP LESTER, Okinawa -- 梅雨の晴れ間が広がった5月20日の朝、少しだけ緊張した面持ちで海兵隊キャンプ・レスターにあるレスター中学校に宜野湾市立真志喜中学校の吹奏楽部の生徒たち19名がが入場しました。会場には一緒に合奏を行うレスター中学校の音楽専攻する生徒達や、パート練習を見てくれる第三海兵遠征軍音楽隊のメンバーや、陸上自衛隊第15音楽隊の隊員も続々と集合し始めとても活気が出てきました。
レスター中学校の音楽教師ロバート・ロス先生がにこやかに自己紹介を行い、早速音合わせを始めました。この日初めて合奏を行う二校なので、急いで午後の音楽祭までの課題を探しました。「アベンジャーズ」、「トランペット。ボランタリー」、「ハナミズキ」、「ハピネス」、「宇宙戦艦ヤマト」そして「イン・ザ・ムード」の6曲が演奏されます。最初の3曲は中学生たちの演奏となり、「宇宙戦艦ヤマト」は第三海兵遠征軍音楽隊と第15音楽隊の合同演奏で、最後の「イン・ザ・ムード」は全員での合奏となります。
指揮はロス先生、真志喜中学校吹奏楽顧問の大城貴彩子先生、第15音楽隊長の永田秀憲二等陸尉、そして第三海兵遠征軍音楽隊のジョシュア・ワルディー二等軍曹が行います。
音合わせが終わった後、両校の生徒達の距離を近づけるためにゲームが行われました。交流を通じて少しお互いに打ち解けあったところで、楽器ごとのパート練習が分かれて行われました。
第15音楽隊の永田隊長は両中学校の生徒たちが将来振り返った時に、今日の演奏会があって自分は成長したと思える1つの糧になってくれたら嬉しいと語りました。また、演奏人口が減っている音楽業界にも危惧しており、これからも学生たちと触れ合いを通して少しでも吹奏楽の楽しさや魅力を伝えていきたいと話しました。「沖縄の子どもたちに演奏を教える機会をもっとつくって技術を提供していく機会を増やしていきたい」
生徒たちのパート練習を見守っていた真志喜中学校の大城先生はこんな大きなイベントになると想像していなかったと話しました。プロの演奏家たちに教えてもらうのは生徒たちにとっていい経験になるし、日頃は自分たちだけで練習をしているが、今回他校の生徒達や、まったく違う環境で練習ができる事は良い刺激になると述べました。そして、こういう機会があればまた是非参加したいと笑顔で語りました。
生徒たちは両隊の演奏家たちから手ほどきを1時間ほど受け、その後また全体合奏を行いました。午後のコンサートに向けての最後のリハーサルになるため、指揮者たちも的確に改善点を伝えつつ、ハーモニーを響かせました。その後休憩を兼ねて昼食となりました。レスター中学校の生徒たちは口々に真志喜中学校の生徒の演奏のレベルの高さを褒めていました。真志喜中の生徒たちみたいにピシッと音を出したいという生徒もいて、他校との交流はレスター中学校の生徒達にもいい刺激を与えていました。
真志喜中学校の吹奏楽部長新垣陽向(ひなた)さんは「とっても楽しい!」と満面の笑顔で語ってくれました。トロンボーンを演奏する新垣さんはパート練習の時に海兵隊の人が大げさに身振り手振りで伝えてくれて英語だったけど分かりやすかったと話しました。トロンボーンのスライドを早く動かす事とか、鋭く息を吹くこととか教えてもらったと語りました。新垣さんの夢であるプロの演奏家になりたいという夢がさらに強くなったと瞳を輝かせました。
昼食後はいよいよ招かれた父母たちやゲストたちへ今日の成果を聞かせる時が来ました。
会場は生徒たちの演奏を楽しみに来た父兄たちでいっぱいになり、ステージ上の生徒達も緊張している面持ちです。朝の初めての音合わせの時より確実に上達した演奏を生徒たちは、とても楽しそうに音を奏でました。言葉は通じなくても音楽という共通の言語で、しっかりコミュニケーションはとれるのだと証明してくれているようでした。
2曲の指揮を務めるワルディー二等軍曹は第15音楽隊とに初めて一緒に合奏した曲は当時とてもポピュラーだった「琉神マブヤー」の曲だったと懐かしそうな顔で語りました。軍曹は十数年前にも沖縄に勤務していました。「今回の経験を通じて生徒達に自分は自分が思っている以上に素晴らしい演奏ができるという事を気付いてほしい。音楽は世界共通で自分たちはみんな同じ人間で自分たちを隔てるものは何一つなく友人になれる事を知ってほしい」
軍曹が指揮をした第15音楽隊と第三海兵遠征軍音楽隊の「宇宙戦艦ヤマト」は会場から割れんばかりの拍手が送られました。
そして最後は全員参加の「イン・ザ・ムード」が演奏され、今回のフレンドシップコンサートは幕を閉じました。
今回のイベントを企画・運用した海兵隊政務外交部石村麻子さんは今回のイベントは第三海兵遠征軍音楽隊からの地元の生徒に音楽を教えたいという強い希望と、レスター中学校音楽教諭ロス氏から地元の音楽を志す生徒達とレスター中学校の生徒達の交流会を持ちたいという希望を形にしたものだと語りました。この交流イベントはライオンズクラブの方々の支援なしでは成し遂げれなかったとも語りました。「イベントを通じ、プロ演奏家からのレッスンを受ける事によりいずれ沖縄の子供たちの吹奏楽のレベルの底上げにつながっていけたら嬉しい」
イベント終了後、ロス先生は破顔させながら語りました。「今回のイベントは大成功だよ、本当に良かった。みなさんの協力でとても素敵なイベントになったし、生徒達も本当にたくさんの経験を得れたと思う」